映画 床屋談義

次の床屋まで待ちきれないので、ブログに書こうと思います。(ネタバレ注意!)

映画 「永遠の0」 批評/感想 ≪ネタバレ注意!≫

作品の説明: 永遠の0 / 永遠の0


永遠の0 Blu-ray通常版








【批評】

久しぶりの記事。4ヶ月近く空いてしまった。その間、記事を書こうと思ったことも何度かあったが、ちょっと忙しくて。


さて、今回取り上げるのは「永遠の0」だが、ぶっちゃけ私はこの手の作品にありがちな“美談を装った軽薄な物語”が大嫌いだ。「ターゲットは偽善者のみ!」みたいな作品には虫唾がはしるし、そんな作品を観て喜ぶ偽善者にも反吐が出る、うぇ!

しかし私が「永遠の0」を観て不快感を覚えることはなかった。それどころか、むしろ好感の持てる内容だった。

この作品は良い意味で“ぼんやり”と作られている。人の主観を映し出しているのか、それとも客観的な事実として描いているのか、判然としない(どちらともとれる)シーンも多い。それゆえ、この作品は観る人によって多様な解釈が可能だと思う。認知的なバイアスの影響も受けやすいのではないだろうか。

個人的には「この作品は“真相は藪の中”という前提を崩していない」と解釈している。そう私は判断した。たとえば、もし「宮部久蔵に関する悪評は全て事実無根! ポジティブな評判は全て真実!」等といった偏った解釈しか成立しないと判断したならば、私は途中で観るのをやめていたかもしれない。しかし私は“藪の中”から大きく逸脱することなく、最後まで懐疑的に作品を楽しむことができた。

しかし「ポジティブな評判は全て真実」などと解釈する人がいても不思議ではない。あるいは、そのような解釈の方が、作り手の意図には適っているのかもしれない。(もしそうだとすれば、個人的にはガッカリだけれど)


そんな「永遠の0」だが、一部ではボロクソに酷評されている。「美化している」等といった類の批判が目立つ。そのような指摘には、きっとそれ相応の理由があるのだろう。

しかし私の感想はまったく逆で、むしろ“力を持ちすぎた美しい虚構”をぶっ壊そうという意図すら感じられた。この作品では“愛”や“命の尊さ”などといったものを“ただ美しい物語”としては描いていない。その矛盾や葛藤、そしてその帰結としての病的な精神状態や自己犠牲的な行為に至るまで、ネガティブな現実をよく描けていると思う。

宮部の“自らの死の選択”に疑問を抱く人もいるようだが、他愛傾向の強い人間であれば、ありえない展開ではないと思う。まして葛藤的な状況に苦悩する宮部が精神を病んで行くシーンを明確に挿入してあるのだから、自らの死を選択しても何ら不思議ではない。

ラストで衝突させずに映像を止めたのも良かった。いろいろと想像力が掻き立てられた。(想像の内容は割愛)

「歴史的事実に基づいていない」などといった批判もあるようだが、その真偽は別にして、それは映画の批評としてどうかと思う。但し、そのような批判にも一理あるとは思う。


まとめ:個人的には悪くないと思う。もう一度観ることはないと思うが、昨年度の邦画ベスト20に入れても良い。

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映画「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」 寸評(感想、批評) ネタバレ注意!

作品の説明: イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ / イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ


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【寸評】

人を踊らす者、踊らされる者。それを傍観する者、俯瞰する者、呆れ返る者、嘲る者、憤怒する者、受容する者、同情する者、協力する者、利用する者。そしてそのような人間や道理を認識・理解することのできる者、できない者…… そのような相関図は、この作品に描かれている“芸術の世界”に限った話ではなく、一般人の日常にもあふれている。

それはこの作品を取り巻く相関図にも顕著に現れている。たとえば、登場人物(ティエリーおよび彼のファンなど)を嘲笑する、この映画の観客。彼らは「あーぁ、踊らされてるよ、馬鹿だなぁ」と優越感を漂わせる。自分が映画の作り手に踊らされていることには気づかないまま。

そんな多様な反応を示す観客も込みで“作品”なのかもしれない。(とポジティブに解釈してみたが、作り手の真意は不明)


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映画「凶悪」 寸評(感想、批評) ネタバレ注意!

作品の説明: 凶悪 / 凶悪


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【寸評】

社会に守られながら反社会的に行為する、卑劣で凶悪な異常者たち。そうやって彼らは札束を積み上げ、不安に蝕まれた精神を取り繕っている。

一方、救助・救済されることのない被害者たち。明らかな不審死ですらスルーされてしまう。

憤慨する映画の観客たち。憎悪がひしひしと伝わってくる。

そんなとき、先生(リリー・フランキー)が、「私を一番殺したいと思っているのは」と言って(「一番凶悪な奴は」と言わんばかりに)藤井(山田孝之)を指差す。見えざる指先が観客に向けられる。

意識を凶悪事件に留まらせることなく、より広い地平を見渡すことのできる観客は、より多くの“見えざる指先”を感じることになる。

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映画「風立ちぬ」 寸評(感想・批評) ネタバレ注意!

作品の説明: 風立ちぬ / 風立ちぬ


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【寸評】

夢を追い求める二郎。

二郎の夢に交わる登場人物たち。とくに菜穂子との紙飛行機のシーンは見所。

そんな夢と重なり合うように描かれる、いじめ、戦争、災害、病、そして死。

「生きて」と菜穂子。ぜひ「来て」バージョンも観てみたい。

エンディングに流れる曲の歌詞も聴き逃せない。

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映画「キック・アス」 批評・感想・ネタバレ注意!

作品の説明: キック・アス / キック・アス


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【寸評】

主人公の言動から窺えるヒロイック・シンドロームは、身の程を弁えずに強者と同一化するチンピラや、分不相応にブッダやイエスに成り切るインチキ宗教家(メサイア・コンプレックス)などにも通ずるものがある。

そんな“イカれた奴”〔※1〕を主役にすれば、下手を打てば“イカれた客しか楽しめない映画“になってしまう。

しかしこの映画(キック・アス)は、“イカれた奴”と“本物のヒーロー”の存在を前提としたストーリーであること〔※2〕、そして主人公の特異性〔※3〕による“イカれた奴”および“本物のヒーロー”との差別化がはかられていること等により、普通のお客さんが楽しめる作品に仕上がっている。


〔※1 主人公の言葉。あえて補足をすれば、防衛的・妄想的に現実を否認・歪曲・捏造するなどして、自己を非現実的に肥大させてしまう、精神病的な人のこと〕

〔※2 作品に登場する“イカれた奴”は、ヒーローのスーツに身を包み、高層ビルの屋上から飛び降りてグシャッ。一方“本物のヒーロー”は、子供のうちから身体に実弾を撃ち込まれるなど“命がけ”のトレーニングを積んでいる〕

〔※3 主人公の特異な点は、事故の後遺症で痛みを感じなくなった身体と、脆弱ながらも機能している現実検討能力。ここでは後者について論及する。たしかに主人公は「ヒーローを生むのは事故や宇宙線じゃない。楽天性と純真さの完璧な配合があればいい」等と考えており、また現実や後先を考えない危険な行動等も見られるため、現実検討能力が高い水準で機能しているとはいえない。しかし彼は自分が「ヒーローから一番遠いタイプ」「特別な力もない」「よくいるタイプだ 存在しているだけ」「ぼくは普通の少年」「クモ男でも、宇宙の難民でもない」ということを弁えている。この“主人公の微妙な現実検討能力”がなければ、この作品は成立しない(別物になってしまう)〕

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Author:ポール
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映画が好きだ。邦画も洋画も大好きだ。
素晴らしい映画を観たあとは、無性に誰かに語りたくなる。
でも友達は真剣に聞いてくれない。身内は耳を傾けてもくれない。
そんな風にして虐げられた思いを、このブログに綴ろうと思う。

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【床屋談義】とこやだんぎ

床屋でするような雑談。

専門家気取りの知ったかぶりも横行する。



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